新しい事業を立ち上げる際、避けて通れないのが「情報発信」です。かつては看板や口コミが主流でしたが、現在はSNSがその役割を担っています。しかし、長年実直にキャリアを積み上げてきた方ほど、「今さら自分を切り売りしたくない」「SNS特有の距離感に疲れてしまう」と、一歩引いてしまうことも少なくありません。
今回は、SNSを「感情を消耗する場」ではなく、プロフェッショナルな「事業ツール」として使いこなすための考え方をご紹介します。
「事業人格」を立て、自分を切り離す
SNSが苦手だと感じる最大の理由は、「発信内容への反応が、自分個人への評価のように感じてしまう」ことにあります。これを解消する最も効果的な方法は、「会社や店舗を一つの独立した人格(キャラクター)として捉える」ことです。
たとえ個人事業であっても、「私」が発信するのではなく「この事業の広報担当」として発信している、というマインドセットを持つこと。この「フィルター」が一枚あるだけで、心理的なハードルは驚くほど下がります。投稿への反応は、あくまでその「事業人格」に向けられたものであり、あなた自身の価値を左右するものではないのです。
「パーソナリティ」をどこまで出すべきか
SNSでは「顔出し」や「人間味」を出すことが推奨されがちですが、これには慎重な判断が必要です。
- 個性を出すメリット:親近感が湧き、熱狂的なファン(刺さる人)が生まれやすい。コンサルティングやコーチングなど、実力が「人」に帰属する仕事には有効です。
- 個性を出すデメリット:生理的な忌避感を持たれるリスクも伴います。特に専門性や信頼感を第一とする場合、過度な私生活の露出は逆効果になることもあります。
飲食店やITサービス開発、法人化を見据えた事業であれば、個人の顔よりも「サービスが提供する価値」や「ブランドの世界観」を主役に据えるほうが、長期的な資産になりやすいでしょう。
事業目的に合わせたSNSの選び方
すべてのSNSを網羅する必要はありません。事業の性質と、ターゲットとなる方々がどこにいるかを見極めることが重要です。
| SNS | 特徴 | 向いている事業 |
|---|---|---|
| 実名制で信頼性が高い。長文も読まれやすく、既存の知人ネットワークを活かしやすい。 | コンサル、士業、B2Bサービス、地域密着型事業 | |
| 視覚的な訴求が中心。ブランドの世界観や「空気感」を伝えるのに適している。 | 飲食店、物販、デザイン、教室運営 | |
| X (旧Twitter) | 拡散力が非常に高く、リアルタイムの情報共有に強い。一方で匿名性も高い。 | ITサービス、最新ニュース発信、広範な周知 |
| ビジネス特化型。経歴や専門性をベースにした繋がりに特化している。 | 専門コンサル、法人向けサービス、人材関連 |
ストレスを最小限にする「大人の付き合い方」
SNSは、あくまであなたの事業を加速させるための「道具」に過ぎません。道具に使われてしまい、本来大切にすべき事業の準備やライフプランの設計が疎かになっては本末転倒です。
「毎日更新しなければならない」「バズらなければならない」という強迫観念を捨て、「必要な情報を、必要としている人に、誠実に届ける」という原点に立ち返ってみてください。
組織で培ってきた「誠実さ」や「専門知見」は、SNSという海の中でも必ず光る武器になります。無理に若者の流行に乗る必要はありません。あなたらしい、落ち着いたトーンでの発信が、同じ価値観を持つ顧客を引き寄せる一歩となるはずです。
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