これまでのキャリアで培った知見を活かし、人生の後半戦は自分の事業を持ってみたい。 そう考えながらも、一歩踏み出すのを躊躇してしまう理由は、やはり「資金」への不安ではないでしょうか。
守るべき家族や生活がある中で、リスクを取って挑戦することは勇気が要ります。特に、「起業に失敗して、老後の資金まで失ってしまったら……」という懸念は、責任感の強い方ほど大きくのしかかります。
しかし、リスクを恐れて何もしなければ、せっかくの経験やアイデアを社会に還元する機会も失われてしまいます。
今回は、中小企業診断士とファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、「リスクを抑えながら起業準備をするための資産運用」についてお話しします。鍵となるのは、「ゴールベースアプローチ」という考え方です。
漠然とした「資産運用」では、不安は消えない
起業資金を作るために投資を始めている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「とりあえず増やせるだけ増やそう」「相場が良いから投資しよう」というスタンスでは、いざという時に足踏みをしてしまうことがあります。
なぜなら、株式市場の暴落と、あなたが独立したいタイミングが重なる可能性があるからです。 「今、解約すると損をするから独立を延期しよう」 そう考えているうちに数年が経ち、情熱や市場のタイミングを逃してしまう——これは非常にもったいないケースです。
ここで有効なのが、「ゴールベースアプローチ」です。 これは、単に資産全体を増やすことを目指すのではなく、「何のために(ゴール)」「いつまでに」「いくら必要か」を設定し、そのゴールごとに最適な運用手法(ポートフォリオ)を組む考え方です。
「老後」と「起業」の財布を分ける安心感
セカンドキャリアを目指す方にとって最も重要なのは、資産に「色(目的)」をつけることです。
- 【守りの資産】老後のための資金
- 目的:自分や家族の最低限の生活を守る。
- 運用:絶対に減らしたくないため、超長期・低リスクの安定運用、あるいは確保済みの預金として別管理します。
- 心の効果:「最悪、事業がうまくいかなくても生活はできる」という絶対的な安心感。
- 【準備の資産】X年後の起業資金
- 目的:事業の立ち上げ費用、および当面の運転資金。
- 運用:例えば「3年後に独立」と決めたなら、その時期に向けてピークを持っていく計画的な運用を行います。
このように財布を分けることで、「起業資金」のリスク許容度(どこまで攻めて良いか)が明確になり、老後資金への不安に足を引っ張られることなく、準備を進めることができます。
資産運用は「経営リスク」のヘッジになる
私は中小企業診断士として、多くの経営者を見てきました。起業初期に最も精神を削るのは、「売上が立たない時期」の恐怖です。
ここで、FPとしての視点を掛け合わせてみましょう。 事前に「起業準備資金」としてしっかり資産形成をしておくことは、単なる開業費用の捻出だけでなく、経営リスク(収入変動リスク)のヘッジになります。
「もし売上がゼロでも、この準備資金を取り崩せば1年半は生活水準を落とさずにやっていける」
この「ランウェイ(滑走路)」が確保されているかどうかで、経営判断の質は変わります。目先の売上に焦って安請け合いをしたり、本来の事業コンセプトを曲げたりすることなく、どっしりと構えて事業を育てることができるのです。
つまり、起業前の資産運用は、すでに「経営の一部」なのです。
未来が決まれば、今の「ラテマネー」が変わる
ゴールベースアプローチには、もう一つ大きなメリットがあります。それは、「日々の行動が変わる」ことです。
例えば、「3年後に500万円の起業準備資金を作る」というゴールと、現在の運用利回りを設定すれば、逆算して「毎月いくら積み立てればよいか」が明確になります。
具体的な数字が出ると、不思議なもので、日々の何気ない出費に対する意識が変わります。 いわゆる「ラテマネー(習慣的に使ってしまう少額のカフェ代やコンビニ代)」などが、「ただの消費」ではなく、「未来の事業資金を削っている」ように見えてくるのです。
「この一杯のコーヒーを我慢すれば、独立への道がまた一歩近づく」
そう思えば、節約も我慢ではなく、未来への投資として前向きに取り組めるようになります。これは、事業主に不可欠な「コスト意識」を養うトレーニングとも言えるでしょう。
準備期間こそが、最初の一歩
起業準備というと、事業計画書を書いたり、登記について調べたりすることをイメージしがちです。しかし、「いつ、どのような状態でスタートを切るか」を定め、そのために資金というリソースを配分・管理することは、立派な経営判断です。
これまでの豊かな経験に加え、盤石な資金計画という武器を持てば、あなたの新しい挑戦はより力強いものになるはずです。 数字の裏付けを持って、不安を自信に変えていきましょう。
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