長年、組織の第一線で責任ある立場を務めてこられた皆様にとって、給与明細から毎月引かれる「社会保険料」は、どこか空気のような存在だったかもしれません。しかし、その「空気」こそが、実は皆様の生活を支える強固なセーフティネットであったことに気づくのは、多くの場合、組織という守られた環境から一歩外へ踏み出した後です。
今回は、独立・起業という新しいステージに進むにあたり、避けては通れない「社会保障の再設計」について、現実的かつ前向きな備えのお話をさせていただきます。
組織を離れて気づく「保障の空白」
組織に所属している間、私たちは意識せずとも手厚い制度に守られています。その最たるものが「傷病手当金」です。会社員の健康保険であれば、万が一病気やケガで長期間働けなくなった際も、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月にわたって保障されます。この「働けなくなった時の給与補償」は、独立して個人事業主になると原則として失われてしまいます。
また、法人を設立した場合でも、自身の役員報酬の設定によっては受給できないケースがあります。さらに、これまで会社が半分負担してくれていた厚生年金保険料も、これからはすべて「自社(自分)」で負担することになります。このコストの変化は、経営者としての第一歩において、冷静に向き合うべき重要な数字です。
独立前の「知恵」が、数年後の自分を助ける
「制度が変わることは避けられない。ならば、それをどう飲み込み、備えるか」 ここが、プロフェッショナルとしてのリスクマネジメントの鍵となります。独立という大きな決断を実行に移す前に、ぜひ検討していただきたい具体的なアクションがあります。
それは、「独立前の、生命保険・医療保険の徹底的な見直し」です。
意外に見落とされがちですが、独立して間もない時期は、公的な信用や収入の安定性が審査に影響し、保険の新規加入や増額が難しくなる可能性があります。会社員という「信用」があるうちに、傷病手当金の代わりとなる「就業不能保険」の検討や、保障内容の最適化を済ませておくことは、非常に合理的な判断と言えます。
「健康」は、最大の事業継続計画(BCP)
社会保障という公的な「盾」の形が変わるからこそ、私たちが意識すべきなのは、究極的には「自分自身を最高のコンディションに保つこと」に集約されます。
中小企業診断士の視点で見れば、独立後の皆様は「自分」という唯一無二の経営資源を運用する経営者です。もしその資源がメンテナンス不足で稼働を止めてしまえば、ビジネスそのものが立ちゆかなくなります。
だからこそ、これからの人生においては、「健康維持」は単なる自己管理の範疇を超え、最も投資対効果の高い「事業継続計画(BCP)」となります。定期的な人間ドックはもちろん、日々の休息や食事への配慮は、経費を削減すること以上に、あなたの事業の持続性を高める重要な「戦略的投資」となるのです。
自由の手綱を、自分の手に
社会保障の仕組みが変わることは、一見すると負担の増加に思えるかもしれません。しかしそれは、自分の生活と将来を、組織に委ねるのではなく、自分の手でデザインし直すプロセスでもあります。
現実を正しく把握し、一歩先の手を打っておく。その備えがあるからこそ、私たちは年齢という枠にとらわれず、新しい世界でしなやかに、そして情熱を持って歩み続けることができるのではないでしょうか。
まずは、今お手元にある保険証券を広げることから、新しい人生の「守りのデザイン」を始めてみませんか。
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