新しい一歩を踏み出し、自分の事業を始めようとする時、多くの人が直面する壁があります。それは「自分と同じようなサービスを提供している人は、他にもたくさんいる」という現実です。
資格やスキル、提供するメニューの充実度だけで競おうとすると、どうしても価格競争やスペックの比較に巻き込まれがちになります。しかし、あなたがこれまで積み重ねてきた月日は、決して誰かと比較できるような薄いものではないはずです。
その他大勢から抜け出し、顧客にとって「特別な存在」になるための鍵。それは、あなたの人生そのものを分かち合う「ナラティブ(物語)」にあります。
経験という「見えない資産」の正体
ビジネスの世界では、よく「差別化」という言葉が使われます。しかし、起業直後において、最も強力で、かつ誰にも真似できない差異化ポイントは、あなたの「経験」と「そこから生まれた繋がり」です。
例えば、ライフプランの設計という仕事。世の中には数多くの専門家がいます。しかし、「人生の転換期に自らも独立を経験し、その葛藤を肌で知っている人」が語る言葉には、理論だけではない重みが宿ります。
さらに言えば、ビジネスのスキルだけでなく、もっと個人的な、プライベートな経験も大きな力になります。
語られない物語が、深い信頼を呼ぶ
私自身の話を少しさせてください。私は現在、中小企業の支援を行っていますが、その原動力は前職のキャリアだけではありません。実は、自営業を営んでいた両親の姿が根底にあります。
幼い頃に目にした、父母が事業に奔走し、苦労する姿。そして、最終的に廃業という道を選んだ時の、あの言葉にできない空気感。それらを間近で見て育ったからこそ、経営者の方が抱える孤独や不安が、理解できるとは言いませんが、他人事ではなく感じられるのです。
こうした個人的な背景は、最初から声高に叫ぶ必要もないですし、自ら進んで話すこともありません。しかし、ふとした対話の中で「実は……」と分かち合った瞬間、クライアント様との心の距離がぐっと縮まることがあります。そのとき、私は「知識を提供してくれる人」から、「自分の痛みを分かってくれる伴走者」へと変わっているのだと思います。
物語を紡ぎ出すための「棚卸し」のヒント
では、具体的にどうすれば自分の物語を見つけることができるのでしょうか。まずは、静かな時間にこれまでの道のりを振り返る「経験の棚卸し」から始めてみてください。
- ライフライン(感情曲線)を描く 一枚の紙に横軸を時間、縦軸を「心の充実度」として、これまでの人生を一本の線で描いてみます。大きな成功だけでなく、挫折や苦労した時期こそが、後に誰かを救う物語の種になります。
- 「なぜ」を深掘りする 曲線の山や谷の部分で、「なぜあの時、あんなに嬉しかったのか(あるいは辛かったのか)」「何が自分を突き動かしたのか」を書き出します。そこに、あなたが無意識に大切にしてきた価値観が隠れています。
- 点と点を繋げる 一見、今の仕事とは無関係に見える趣味やプライベートの出来事と、現在の活動を結びつけてみます。例えば「子育てでの忍耐が、今の粘り強いコンサルティングを支えている」といった具合です。
特別な経験は必要ありません
「自分には、そんなドラマチックな物語なんてない」と思われるかもしれません。でも、決してそんなことはありません。
あなたが長年こだわってきたこと、大切にしてきた価値観、あるいは人には言えないような失敗。それらすべてが、ナラティブの素材です。あなたが何に涙し、何に喜び、何を信じて今日まで歩んできたか。その「感情」や「想い」が相手に伝わった時、あなたは顧客にとって、世界に一人だけの存在になります。
もちろん、提供するサービスの質が優れていることは大前提です。しかし、最後の決め手となるのは、常に「誰から受けるか」という人間同士の響き合いです。
あなたの歩みを、誇りに思うことから
これまでの道のりで、あなたは多くのものを守り、築き、時には手放してきたことでしょう。その一つひとつに意味があり、今のあなたを形作っています。
仕事のキャリアだけでなく、一人の人間としての歴史をすべて統合して、これからのビジネスに載せていく。そんな「自分らしい表現」を探してみるのはいかがでしょうか。
あなたの物語を必要としている人が、どこかであなたの声を待っています。
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